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AGRI SMILE、国内初!脱炭素社会実現に向けて食品残渣からバイオスティミュラント化に成功 ~廃棄されていた赤パプリカを、植物の免疫力を向上させる農業用資材に変えて、「食品残渣の再資源化・化学肥料低減・農作物品質の向上」を同時に実践〜

2022.10.26

株式会社AGRI SMILE(本社:東京都千代田区神田小川町、以下AGRI SMILE)は、フードサプライチェーンで廃棄されていた赤パプリカに、独自の加工処理技術を施すことにより、農産物の成長に貢献する画期的なバイオスティミュラント素材(注1)の開発に成功しました。さらに、本技術は、幅広い領域への事業展開が期待できるため、特許出願を行いました(特願2022-134366)。
これにより、生産地の規格外廃棄物や、食品加工・製造過程の廃棄物等による「食品残渣」の再資源化を図りながら、バイオスティミュラントの特長である「農産物の品質や収量において堆肥化よりも高い効果を得る」ことで、地域資源の循環体制を構築し、脱炭素社会と持続可能な農業生産を両立させたイノベーションを実現します。

<開発の背景>

地球温暖化に伴う影響は、気象災害だけでなく、食料不足や健康リスクの増加などへ拡大しており、とくに、農業現場では高温・乾燥などの環境ストレスに晒され、品質面や収量面で深刻な影響を受けています。そのため、地球温暖化の喫緊の対策として、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」計画が世界各国で策定され、取り組みを開始しています。
フードサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量は、総排出量の21~37%で、このうち、農業生産活動では総排出量の10%、フードロス等の食品加工製造活動では総排出量の8~10%に相当するといわれています。
フードサプライチェーンの地球温暖化対策として、温室効果ガスを排出する「化学肥料の使用量削減」が求められています。しかし、肥料削減は減収に繋がる可能性があり慎重な計画推進が必要なため、産地では未だ手を付けられていない現状が多くあります。
また、製造工程では、食品廃棄物を再資源として活用する「堆肥化」が進められていますが、堆肥は安価で事業採算性が取れない課題や、土壌改良効果は見られるものの農作物の品質や収量において、化学肥料以上の効果が示されていない課題があります。

<食品残渣型バイオスティミュラントの利点>

食品残渣型のバイオスティミュラントは、堆肥化よりも植物の品質・収量の向上率が高く、再資源化に取り組む事業者の事業採算性が見込めます。また、フードサプライチェーンの食品廃棄問題を解決しながら、農業生産量の拡大や化学肥料の使用量低減に寄与できるため、脱炭素社会の実現と、環境保全型農業の実現が両立できる画期的な生産技術です。

<開発の成果>

AGRI SMILE独自の「スクリーニング方法論(特願2022-109357)」により開発期間を大幅に短縮することで、赤パプリカ残渣を活用したバイオスティミュラントの開発に成功しました。
本開発には、AGRI SMILE独自技術である、国内唯一のバイオスティミュラント資材の有効度を測定する「評価指標(特願2022-109418)」を用いることで、元素解析・遺伝子発現解析等の作用機序の解明を進めました。
この結果、ラボ試験での表現型検証では、対照区と比較して処理区では、根張りが有意に向上し、また、RNA -seq(注2)による遺伝子発現解析の結果、熱ストレス耐性に関係する遺伝子で40倍以上、元素吸収に関する遺伝子で4倍以上、発現量が増加している遺伝子があることを確認しました(FDR p-value<0.05)。

<今後の取組み>

赤パプリカのラボ試験結果をもとに、各地の農業協同組合と連携しながら、現場実証を行い、生産現場での収量向上・高品質生産データの取得を経て、資材化事業に取り組みます。
AGRI SMILEの過去実績として、産地と共同した圃場試験では、バイオスティミュラントを散布した圃場において、炭素貯留量が向上する結果を得ています。さらに、検証を進めることで、脱炭素化に資するソリューションとして、バイオスティミュラントの利用拡大を図ります。
AGRI SMILEは、農学系バイオテックカンパニーとして、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とGX(グリーン・トランスフォーメーション)の両面で、事業成長を加速させてまいります。

※注1:バイオスティミュラントとは
バイオスティミュラントは、「作物の活力、収量、品質および収穫後の保存性を改善する資材」として期待されており、2030年に約7500億円のマーケットとして注目されている新しい農業用資材です。気候変動によるストレス耐性に寄与し、植物の免疫系を活性化することで、根張り・収量の向上や、乾燥/過湿耐性、耐病性、耐⾼/低温性、耐塩性といった効果をもたらし、栄養吸収の強化に効果のある資材も確認されています。そのため、生育状況を考慮しながら利用することで、過剰な化学肥料の使用を抑えた事例もあります。
原料候補は、微⽣物/多糖類/ペプチド/有機酸/ミネラル/腐植酸など多岐に渡り、加工処理を施し、植物試験や遺伝子発現解析等の検証を進めることで、バイオスティミュラントの性質を発揮する素材を発見することができます。

引用:農林水産省「農林水産研究イノベーション戦略2021」から作成
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/innovate/attach/pdf/index-3.pdf

※注2:RNA-Seq とは
RNA-Seqとは、次世代シーケンスを用いて網羅的に遺伝子発現レベルを調べる手法です。 例えば、特定の成分や薬剤を処理した際や、特定のストレス環境下に晒された際の効果・影響を網羅的に遺伝子発現レベルで調べることができます。成分Aを植物に添加した場合と添加していない場合の遺伝子発現レベルを比較することによって、成分Aがどのような遺伝子発現に影響し、最終的に植物の機能へ繋がる可能性があるのかを網羅的に調査・推定することができます。

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